ジャズバーに初めて来てみた。中に入ると、プロであろう演奏陣の奏でる音楽が耳に入ってきた。なるほど。やはりジャズバーというのは、お酒を飲みながらプロの演奏を聴くことのできる場所らしい。
あまり人通りのない場所に店を構えているせいか、客は指で数えられる程度であった。午後七時という時間のせいかもしれない。こういう場所はもう少し遅い時間がピークのような気がする。
しかし、37にもなって私はバーという形式の店に入った経験が全くなく、少し緊張してしまっている。
私はカウンターの奥の方の席に座り、ジントニックを頼む。注文したものが来るまで、慣れない空気にそわそわしていた私であったが、出されたジントニックのスライスされたライムの爽やかな香りと微かな酸味が、体内に流れ込むにつれて気分が落ち着いていくのが自分でもわかる。
「おひとりですか?」
しばらく飲んでいると、男が話しかけてきた。見た目は40代半ばだろうか。顔には小じわがところどころあり、頭には少し白髪が混じっている。
「え?あ、はい。一人ですけど・・・」
アルコールで少し気持ちは和らいだとはいえ、やはりまだ緊張はしているのだ。それに35を超えてから、見知らぬ男性に話しかけられることなど少なくなってきていた私は、少し戸惑ってしまった。
「急に話しかけてしまって申し訳ない。ただちょっと誰かと話をしたくなってしまっただけの者です。怪しい者ではないので、どうかそう身構えないで。隣、よろしいですか?」
男はそういうと、隣に座ってバーボンを注文する。私はお酒が強くないので、バーボンなんて飲んだらひっくり返るのだが、その男はススッと飲む。実は既に少し酔ってしまっているかもしれない。
話しかけるべきであろうか。いや、話しかけるべきなのだろう。せっかく話しかけてくれたのだ。何か話しかけないと申し訳ないだろう。感覚だが、バーとは客同士が仲良くなり、「じゃあ、またここで」のような感じで常連を増やしていくのではないだろうか。そういう場なのであろう。初めてなのでわからないが。しかし何を話したらいいのか、頭が回らない。
「ここは最近できた場所ですけど、来るのは初めてで?」
呻吟してる私に、男は聞いてくる。
「初めてです。職場がここの近くにあって、ジャズバーってどんなのだろうと興味がわいたものでして。あなたはすでに何回か?」
何を話しかけたらいいか本気で困っていたので助かった。どういう話題で話しかけるべきか、頭の中でいろいろと渦巻いていたモノが消えていく。
「今回で三回目です。クラシック音楽が好きでして。昔はその道を目指したこともあったのですよ。」
やはりこういうところに来る人は、この男性のような人が多いのだろうか。
「あなたもクラシックやジャズがお好きで?」
うっ・・・。聞かれてしまった。実は私はクラシックやジャズなどの良さはあまりわかっていない。古臭い感じがどうにもぬぐえないのだ。そんな私だが、職場の近くに新しくジャズバーができたというのを小耳にはさんだ。バーに行ったことないとは先ほどにも言ったが興味はあったのだ。それで仕事帰りに、思い切って寄ってみることにしたのである。
どう答えるべきであろうか。素直に「興味はないけどなんか来てみた。」なんて答えてみようか。いやしかし、ふむ・・・。
「えっと、まぁたしなむ程度に・・・。」
なかなか大人ぶった返事ができたのではないだろうか。しかしこの言い方だと「たしなむ程度に経験がある」ととらえらないだろうか。
「ほぉ!ちなみに何の楽器をやっておられたんですか?」
「・・・ピアノです。」
あまり人通りのない場所に店を構えているせいか、客は指で数えられる程度であった。午後七時という時間のせいかもしれない。こういう場所はもう少し遅い時間がピークのような気がする。
しかし、37にもなって私はバーという形式の店に入った経験が全くなく、少し緊張してしまっている。
私はカウンターの奥の方の席に座り、ジントニックを頼む。注文したものが来るまで、慣れない空気にそわそわしていた私であったが、出されたジントニックのスライスされたライムの爽やかな香りと微かな酸味が、体内に流れ込むにつれて気分が落ち着いていくのが自分でもわかる。
「おひとりですか?」
しばらく飲んでいると、男が話しかけてきた。見た目は40代半ばだろうか。顔には小じわがところどころあり、頭には少し白髪が混じっている。
「え?あ、はい。一人ですけど・・・」
アルコールで少し気持ちは和らいだとはいえ、やはりまだ緊張はしているのだ。それに35を超えてから、見知らぬ男性に話しかけられることなど少なくなってきていた私は、少し戸惑ってしまった。
「急に話しかけてしまって申し訳ない。ただちょっと誰かと話をしたくなってしまっただけの者です。怪しい者ではないので、どうかそう身構えないで。隣、よろしいですか?」
男はそういうと、隣に座ってバーボンを注文する。私はお酒が強くないので、バーボンなんて飲んだらひっくり返るのだが、その男はススッと飲む。実は既に少し酔ってしまっているかもしれない。
話しかけるべきであろうか。いや、話しかけるべきなのだろう。せっかく話しかけてくれたのだ。何か話しかけないと申し訳ないだろう。感覚だが、バーとは客同士が仲良くなり、「じゃあ、またここで」のような感じで常連を増やしていくのではないだろうか。そういう場なのであろう。初めてなのでわからないが。しかし何を話したらいいのか、頭が回らない。
「ここは最近できた場所ですけど、来るのは初めてで?」
呻吟してる私に、男は聞いてくる。
「初めてです。職場がここの近くにあって、ジャズバーってどんなのだろうと興味がわいたものでして。あなたはすでに何回か?」
何を話しかけたらいいか本気で困っていたので助かった。どういう話題で話しかけるべきか、頭の中でいろいろと渦巻いていたモノが消えていく。
「今回で三回目です。クラシック音楽が好きでして。昔はその道を目指したこともあったのですよ。」
やはりこういうところに来る人は、この男性のような人が多いのだろうか。
「あなたもクラシックやジャズがお好きで?」
うっ・・・。聞かれてしまった。実は私はクラシックやジャズなどの良さはあまりわかっていない。古臭い感じがどうにもぬぐえないのだ。そんな私だが、職場の近くに新しくジャズバーができたというのを小耳にはさんだ。バーに行ったことないとは先ほどにも言ったが興味はあったのだ。それで仕事帰りに、思い切って寄ってみることにしたのである。
どう答えるべきであろうか。素直に「興味はないけどなんか来てみた。」なんて答えてみようか。いやしかし、ふむ・・・。
「えっと、まぁたしなむ程度に・・・。」
なかなか大人ぶった返事ができたのではないだろうか。しかしこの言い方だと「たしなむ程度に経験がある」ととらえらないだろうか。
「ほぉ!ちなみに何の楽器をやっておられたんですか?」
「・・・ピアノです。」
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